【vol.3】ヒトは感情の生き物

宇宙的な視野の広さを持って見ると、地球には2つのものしかありません。

それは「生きているもの」とそれ以外です。

「生きているもの」はいわゆる「生物」です。

一方、土や空気や水は生物ではありません。

量で言えば、地球上に生き物はほんのわずかしかいません。

加齢による肉体や心の変化は、やむを得ないことだとわかっていても、

ポジティブに捉えることはなかなか難しいものです。

若い頃を懐かしく思い、老化した身体を愁うこともあるでしょう。

身近な人の死に直面して、悲しみに暮れることもあるでしょう。

老化は死へ一歩ずつ近づいているサインであり、

私たちにとって「死」は、絶対的な恐るべきものとして存在しています。

そこでこんな疑問が頭をよぎります。

なぜ、私たちは死ななければならないのでしょうか?

生物学者の私から見ると、生物の仕組み、ひいては自然界の仕組みは、偶然が必然となって存在している、つまり「たまたま」だと思っていたのが、「なるほどね」と思えることばかりなのです。(中略)この地球に生命が誕生したのも、現在たくさんの生き物が存在することも、そして、死ぬことも、全てなるほどと思える「そもそも」の理由があるのです。

当然、私たち人間が死ぬことにも、理由があるのです。

その生き物の不思議な謎を解くカギは「進化が生き物を作った」という事実です。

地球に存在する生き物は全て、進化の結果できたものです。

なんでこんな形になったのか、なんでこんな性質があるのか、この遺伝子は一体なんのためにあるのか、そしてなぜ生きているのか、などなど、全てのことに、進化で生き残ってきた偶然と必然の理由があるに違いありません。

それを推察し、可能ならば実証するのが、生物学の面白さです。

宇宙人(エイリアン)が地球を訪れることは現実にはほぼありませんが、もし私たち地球人のやっているように、宇宙人が別の生命体を探していて、偶然にも地球を見つけたと仮定します。おそらく大興奮するでしょう。

(中略)

それでは宇宙人に受ける地球の一押しはなんでしょう?

私は確信を持って言えますが、他の無機質な惑星と違い、宇宙からの来訪者が一番関心を持つものは、何といっても、多様な生物です。

何が美しいと感じるかはもちろん人それぞれですが、大まかには普遍的な法則があると思います。その一つのヒントが、日本の美の象徴である「桜」です。

(中略)

ではなぜ、ヒトは桜に惹かれ、それを好み、美しいと感じるのでしょうか?

生物学的には、次のような説明が可能かもしれません。

それは「変化」です。ぱっと咲いてすぐに散る。

満開の桜の花は「新鮮」の極みであり、生命の力強さに溢れています。

桜以外でも同じことが言えると思いますが、ヒトは本能的に新しく生まれたものや変化にまず惹かれるのです。

地球はまさにこの新鮮さに満ちています。全てが常に生まれ変わり、入れ替わっています。先ほど挙げた「作っては分解して作り替えるリサイクル」というお話を思い出してください。

このことを「ターンオーバー(turn over)/生まれ変わり」と言うことにしましょう。

これが、本書の重要なポイントの1つ目となります。

ターンオーバーこそが奇跡の星地球の最大の魅力です。

そしてその生まれ変わりを支えているのは、新しく生まれ変わることと共に、綺麗に散ることです。この「散る=死ぬ」ということが、新しい生命を育み地球の美しさを支えているのです。

メモ1

・遺伝子の変化が多様性を生む

・多様性があるからこそ死や絶滅により生物は進化してきた

・「死ぬこと」自体も進化が作った

・基本的に食う食われるにより地球は繋がっており「命の総量」はあまり変わらない

・「死」にショックを感じるのはヒトが「強い感情を持つ生き物」だから

・同情、共感は「優しさ」

・同情心(優しさ)、徳(全体への優しさ)は変化と選択の進化の過程で獲得したもの

・自分だけ生き残ればいいという利己的な能力よりも、集団や全体を考える能力の方が重要であり、選択されてきた

・生き物が死ななければいけない理由は「食料、生活空間の不足」「多様性のため」

・人類は少子化対策をとらなければ100年ももたない

・「多様性のため」とは、遺伝情報(ゲノム)が激しく変化し、多様な「試作品」を作る戦略のこと

・変わりゆく環境下で生きられる個体や種が必ずいて、それらのおかげで「生命の連続性」が途絶えることなく繋がってきた

・「試作品を作る」には、材料の確保と多様性を生み出す戦略が必要

・「材料の確保」には、古いタイプを壊してその材料を再利用する、つまりターンオーバー

・「多様性を生み出す」には、「性(有性生殖)」という仕組みが大事

・「有性生殖」とはマイナーチェンジの多様性を生み出すために進化した仕組み

・親は死ぬという選択によって、一族の変化を加速する

・自分より(多様性に富んでいるという意味で)優秀な子孫が独り立ちできるようになるまではしっかり世話をする必要がある

・ヒトのような高度な社会を持つ生き物は、単なる保護的な子育てに加えて社会の中で生き残るための「教育」が重要。そのために親は長生きする必要がある。

・親に加え、その親や祖父母の元気さ、社会、周りのサポートが必要。

・親以外の「子育て(教育)の質」が大事。これは社会の質とも言える。

・ヒトの場合、親やコミュニティが子供に何を教えるべきか自ずと見えてくる(読み、書き、そろばん)。社会のルールを理解し、協調して生活するための最低限必要な教育。

メモ2(ここから重要✴️)

・次に子供に教えないといけないのは、せっかく有性生殖で作った遺伝子の多様性を損なわない教育。「個性」とも言える。

・親や社会は、既存の枠に囚われないようにできるだけ多様な選択肢を与えること。単一的な尺度で表をしないことが大事(普通、世間、常識、マジョリティなど)。

・「個性を伸ばす」には親以外の大人の存在が必須。個性が伸び始める中高生くらいからは積極的に「家の外の大人」と関わらせるべき。

・社会全体で多様性を認め、個性を伸ばす教育ができるどうかが、この国の命運を分ける。

・他人と違う、違う考えを持つこと、まずは認めることから。

・若者が自由な発想で将来のビジョンを描ける社会が本当の意味で強い社会。

・個性を伸ばす教育とは、型にはまらないことを良しとする教育なので難しい。

・その達成に一番効率的なのは「本人に感じさせること」「親やコミュニティが自ら見本を見せること」。

・⭐️「君は君らしく生きればいいよ、私がやってきたみたいにね」。

・⭐️子どもの個性の実現を見て、親はその使命を終えることができる。

・「個性的であること」を強要するのは違う。なぜなら何が個性的であるか、答えはなく、誰も知らないから。それが多様性の1番の強み、予測不可能な未来を生きる力である。

・ヒトは「感情の動物」である、長生き感情は決して利己的ではなく、当然の感情。

・長生き願望はしっかりと次世代を育てなければならないという生物学的理由がある。最低でも子供が大きくなるまでは頑張って生きないといけない。

・ハダカデバネズミは普通のネズミの10倍生きる。真似できないか?

・子育て対策:子供を産むカップルへの対応を手厚くする。養育費の負担。保育士の拡充。親個人にかかるコストや労力、ストレスの軽減。

・働き方改革:生涯現役の実現。年金システムは少子高齢化の状態では若者負担が増える。年をとってもできる仕事、やりたい仕事を一生続けられる仕組みが必要。

・昼寝:皆が競って仕事量を増やし成果を競う社会から、効率を上げゆとりある社会に転換する。資本主義の終わり。社会のストレスを減らす。

・進化、つまり、「変化」と「選択」を実現するために「死ぬ」。

・生き物が生まれるのは偶然だが、死ぬのは必然。壊れないと次ができない。まさにターンオーバーである。

・つまり、死は生命の連続性を維持する原動力そのものである。悪ではなく、生物にとって必要なもの。命を次の世代に繋ぐべく「利他的に死ぬ」。私たちは次の世代のために死ななければならない。

・自分を失う恐怖から逃れる方法はない。それはヒトが「共感力」を身につけ、集団を大切にし、他者とのつながりにより生き残ってきた証だから。

・ヒトにとって「共感力」は何よりも重要。喜びを分かち合うこと、感情を肯定してもらうことで幸福を感じる。

・美味しい料理を二人で食べて「おいしいね」と言うだけでさらに美味しく感じるのがヒトなのです。

・ヒトにとって「死」の恐怖は、「共感」で繋がり、常に幸福感を与えていてくれたヒトとの絆を喪失する恐怖なのです。

以上を踏まえ、私は何をしよう?

・ヒトの生物学的使命 遺伝子を残すこと

・感情を共有する 孤立しない 仲間同志と居る これこそが人間としても最も価値のあること

・働きすぎない 昼寝鼻歌ができるくらい 資本主義に加担しない ヒトの目的・性質を見失わない

・子育てに適した環境で子供と過ごす 子供を過ごさせる 子供に大人に関わらせる

・子供が育つのに必要な最低限の資本力

・子供に恥じない生き方 子供に恥をかかせない 悪影響を及ばさない生き方

・父として見本となる生き方

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